クロムは、人間の体に必要な必須ミネラルのひとつですが、不足するとどのような病気を招く恐れがあるのでしょうか。クロムが不足する可能性やクロムの欠乏による病気について見ていきましょう。
クロムは吸収率の低いミネラル
酸化クロムの吸収率は2~3%と低く、ミネラルの中でも吸収されにくいとされています。しかし、クロムは必須ミネラルであるものの、必要量はわずか。多くの食品に含まれているということもあり、一般的な食生活を送っていれば、クロムが不足することはほとんど起こりません。ちなみに、ビタミンCを含む食品と摂取すると吸収率が上がる一方、糖分の過剰な摂取は、クロムの排出を招きやすくなります。また、クロムが土壌に含まれている量が少ない地域で暮らし、土地の産物しか食べないといったケースも、クロムの欠乏が起こりえます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、クロム食事摂取基準は成人男性と成人女性ともに、1日10μg(=マイクログラム)の摂取が必要量として推奨されています。
クロムが不足すると?
クロムが不足することは一般的には考えにくいですが、もしクロムの欠乏が起こった場合には、どのような病気や体の変調が起こるのでしょうか。
クロムは体のあらゆる代謝に関わる物質です。クロムが不足すると、特に糖質と脂質の代謝異常が問題になります。
まず、糖質の代謝異常について解説します。インスリンを助けるクロムが不足すると、糖質代謝を促す働きが十分にできず、糖の代謝異常となります。血糖値が上がった状態となり、糖尿病を発症することがあるのです。
次に、脂質の代謝異常が起こると、血液中の中性脂肪やコレステロールの値が上がってしまいます。脂質異常症や高血圧となり、動脈硬化を引き起こす恐れが想定されます。子供の場合には、代謝機能の低下によって、成長に影響を及ぼすことも懸念されます。
クロムを摂取しやすいのは海藻類
食品群の中で、クロムを摂取しやすいのは藻類です。100gあたり、あおのりには41μg、干しひじきには24μgと多く、マコンブや海苔にも含まれています。日本人は比較的海藻類をよく摂取するので、クロム不足になることは少ないとされています。
魚介類や種実類などにも比較的多い
魚介類や種実類にも、クロムが比較的多く含まれています。魚介類では、マサバとサザエは100gあたり6μgのクロムが含まれ、アサリやシジミ、エビなども含有量が多いです。種実類では、たとえばアーモンドには9μg、銀杏は5μg含まれています。
そのほか、ビール酵母やハーブ、スパイスなども、クロムを多量に含む食品です。肉類では牛肉やレバー、加工食品ではコンビーフやベーコンがクロムの含有量が多い食品としてあげられます。野菜類では、緑黄色野菜ではほうれん草やブロッコリー、淡色野菜ではキャベツです。黒糖蜜や黒こしょう、チーズ、ナッツ類にも多く含まれています。
サプリメントでの過剰摂取に注意
クロムの過剰摂取が考えられるのは、サプリメントでの摂取です。「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、成人の1日の食事接種基準は10µg(=マイクログラム)です。しかし、サプリメントの中には、記載されている用法が、推奨されている摂取量を上回っているものがあります。
クロムの食事接種基準を大幅に超えて、1日600~1000 µgもの量のサプリメントを長期間にわたって、継続的に摂り続けると、体に変調をきたす恐れがあります。マルチミネラルのサプリメントにクロムが含まれていることもありますので、注意が必要です。
クロムの過剰摂取では、吐き気や下痢、頭痛、不眠などの睡眠障害、肝臓障害が起きることがありますので注意しましょう。